大衆の反逆

民主主義に於いて衆愚批判はつきものである。オルテガの名著「大衆の反逆」は衆愚批判の著とされる。確かにオルテガは大衆を批判した。しかしオルテガの云ふ處の大衆は世間一般の大衆と微妙に意味が違ふ。世間ではオルテガは普通の庶民に對して罵倒し知識人を擁護したとされる。實は逆でオルテガが罵倒したのはある種の知識人であり、むしろ常識ある庶民を擁護した程である。オルテガが批判した知識人は所謂進歩派である。第一次大戰以後、知識人は急激に左傾化し、空虚な理想主義に走つた。彼等は多數派にゐる自分に安心する、しかも自分たちとは違ふ少數派を罵倒する。現代日本に於いてこの種の知識人は大勢ゐる。オルテガの大衆の議論は現代日本に於いて有効である。