問題意識

西洋近代の始まりは反近代から始まつたといへる。西洋近代の模倣として始まつた日本の近代化はその反近代性を見ず、ただ前近代の批判から始まつた。明治の知識人は近代の表層部分だけ理解し、近代の根底にある反近代性を自覚しなかつた。漱石は日本の近代化を「現代日本の開化は皮相上滑り」といふ。漱石は西洋の根底に反近代性がある事を本質的に理解したのだ。戦後に於いては西洋の反近代性は自覚されず、盲目に戰前日本の反近代性が批判された。日本の諸問題の根底は反近代の無自覚にある。