讀書感想『批評とポストモダン』柄谷行人著

柄谷行人が「批評とポストモダン」を書き出した時代、思想界隈ではニューアカといふムーブメントが起きてゐた。大學生の多くが現代思想と呼ばれる。ニューアカ系の學者が日本に輸入した哲學書を讀んでゐた。柄谷行人もその現代思想を輸入した學者として數へら…

夏目漱石試論Ⅰ

日本人の國民作家と云へば夏目漱石で誰も異論はないだらう。私は江藤淳や柄谷行人のやうな力量はないのでこの偉大なる國民作家の全體を見る事は不可能である。しかし批評がもし独立した藝術形式ならば私が此処で夏目漱石の全體を語る事が出来なくとも、それ…

大衆の反逆

民主主義に於いて衆愚批判はつきものである。オルテガの名著「大衆の反逆」は衆愚批判の著とされる。確かにオルテガは大衆を批判した。しかしオルテガの云ふ處の大衆は世間一般の大衆と微妙に意味が違ふ。世間ではオルテガは普通の庶民に對して罵倒し知識人を…

問題意識

西洋近代の始まりは反近代から始まつたといへる。西洋近代の模倣として始まつた日本の近代化はその反近代性を見ず、ただ前近代の批判から始まつた。明治の知識人は近代の表層部分だけ理解し、近代の根底にある反近代性を自覚しなかつた。漱石は日本の近代化…